2004/06

アウディの銀が輝く六月の月さえ淀む湿気た真夜中

水を張り終えた田園より蛙潤いに喜ぶ唄歌う

水滴を集め露草蒼になり日の明けるとともに天に逝く

枯れ草の広がる河原は夏草茂りて若い緑に

光にて白む公園眩しさの中で響くは幼いノイズ

午後三時紫外線通すアジサイ恨めしげに隠れるマイマイ

入梅も判らぬほどの日差し降り濡れぬ傘開く乙女たちよ

手に絡むマドロミつれたパルファン積乱雲が流し去っても

やたら高い値をさす湿度計心の底の値も上がり

水田を強く激しく叩き付け一つなりゆく午後の夕立

雨降らぬ梅雨空の下歩けどもあの恋心忘れられずや

うなされて午前二時未明の羽音憎憎しくも少しの野生

団地は蛍光灯の鈍い光に浮かび上がり雲と重なる

にび色の空に映えるペニチュアの色彩に過ぎた初夏を知る

NOIRと唇を泳がす人の肩に止まりしクロアゲハテフ

松田聖子が夏を歌う昔の映像に見知らぬ感情

雨がなすブラインドウの一滴唇振れて地面に向かう

低く飛ぶツバメに触れて一滴天に帰るように霧散する

紅く燃えるトマトが実る畑の中にたたずみし青い香り

水張ったばかりの水田に映る空は最初の訪問者

夕立が燻らす夕立のにおいそれを消すため強く雨降る

ウォータープルーフの女の首筋雨粒がそっと流れ落ちる

髪の先まで湿りたる梅雨空の泣かんばかりの曇り空と今

夕方に嵐が来ると流れるも貪欲に登り行く朝顔

午後三時まどろみを知り入れたるは冷たき汗を流すコーヒー

わが顔で積乱雲が昼日向影に包みて汗が冷えいく

じりじりと日差しが刺さるこの肌に君は何を見何を感じる

ガラス器に入れた異国の海砂は潮騒の音もしないのにね

湿度ばかり高いこの国の夏は恋を重ねるのに相応しい

水菓子がのどを静かに落ちていくこの日この午後にはもう会えぬ

フレーバーティーが静かに色づくそんな水のように午後は行く

陽光も曇りに蔭る梅雨頃の傘の花のみただ彩やかに

偲ぶれど眉に出にけり苛立ちの鋭さほども雨を憎まじ

淡路島架橋の果てに浮かぶもモザイク様に秘して隠して

快速の素早さ知るのなら都落ちすら楽しめるのに

朝顔の伸び行く蔓の果てのはて命の鎖知らぬ世に着く

虫食われ穴開きたるも夏陽射し通り抜けては土を刺したる

何処となくスワローテイルズバタフライ何処か似ている往きし家人に

襟元に湿りを潜め思うのは吾の事かあるいは彼の人か

湿り気を嫌いて頼るエアコンの埃臭さに季節一年

見慣れぬ台風が来たり予報図の慣れぬ模様に心は騒ぐ

囁きによく似た雨が町にきて未だ知りえん気持ちしらせて

貨物車にたたずめり中元の届け先にて待つ宿命

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