2004/09
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風涼し九月はじめの夜明けごろ夏の形見に朝顔開く
秋雨に湿るこの部屋私在り指先に住む寂しさを知る
金色にたなびく稲の艶やかさ目を細くしてうつとりとする
揺れているこの暗闇の満月の下に広がる世界で今宵
忘れずに生きることは幸せと呼べるだろうか鱗雲に問う
今すぐに世間が終わり逝こうともアケビは熟れて知らずに割れる
秋薄なびかす風に囁くは己のことと往く夏のこと
トランスで騒がしたって街の影秋の方へと惹かれて伸びる
心にて風船のように膨らむは淡い幻影枯れた鬼灯
白粉を濃く塗りこむディオール幻想の華を花の都に
モリハナエジャポニズムの光差す高きに上り仙道を行く
空調行き届いたる電車は差す光にて残暑らしく
風行きてアクリル様の空があり私は蒼いペンを思った
夕暮れに自転車にて走りゆく九月半ばに汗は流れる
夕闇のさらに濃くなり鱗雲溶けてなくなりただ満月あり
半袖にこれで仕舞いとアイロンを押し当てるけど額には汗
おみなえし早くも開き密やかに秋は進むと誰か教える
闇に融け空と海原一重なりただ石鹸の香り漂い
遠方のネオンがまるでサファイヤあなたがいない夜もまた良し
夏行きて市民プールは誰もなく主人なくした騒ぎあるだけ
ウツセミがころんと休む境内の暗やみわずか秋を忍ばす
白檀暗やみのなか囁いて天に満月あること知らす
今だ宵暑くけだるし蒸したりてけど撫でる風ほのかに涼し
新作の秋味甘味ポッキーをきみと二人で笑みて味わう
馬肥える程に高まりあの空はさらに自由に飛行機浮かす
秋刀魚達買い物袋からのぞくくってやるから安心してな
ちぐはぐな緑色なる梨の実のひめたる水気恋に似ている
こんなにも曇りがちの日やや頭痛でも実りある季節の犠牲
松茸の大陸からの輸入も軸を捨てたる人がいるらし
夜にふる秋雨聞いて沈む闇冷ややかな風正気を得る
芥散るこの部屋に降る陽光の色の変わりに気がつく秋
なる柿の満ちていく色愛染まりあなたのことに重ねて見入る
栗の実の保守的なるドレスありおおこの痛み命懸けかな
こぼれゆく川の流れに魚があり鮭にあらずも鮭を重ねる
偽りの夏日ばかりが転がりてまだ足を取るああ忌々し
世の果ての空気はらんだ珊瑚草私は遠くルーツ忍んだ
逆らうも風に流れし鱗雲形を変える心やからだ
足元に毛布用意す長い夜涼風ふくも蹴られ包まり
知らぬ間に昼が短く成り行くを何もしなくてただ惚けたる
真夜中にそっと抜け出し空のぞむ古人のオリオンすでに
道ふさぐ黒い毛皮の猫ひとつ置物みたく微動だにせず
強大我が身浸らす大嵐変わり始めた木の葉をちらす
君がためなんて言い訳考えて憂い溢れる秋雨を行く
静止した闇夜に吠える台風に連れられ走る光の獣
足元の巨大な池昨日まで此処にはなくて何処にいたのか
口どけを確かめるように舐めたる今年始めのチョコレートを
溶けていくそのはかなさがいとおしく思わず涙何か思いて
山の腹知らず色付き紅葉色君と並んで秋に染まろう
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