2004/10
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エアコンがオクトバーにてまだ唸る存在感のない町のビル
果物を多く含んだパンかじる真昼の喉に切ない甘さ
青々と葉を茂らした鉢植えの上に広がる鱗の模様
秋鮭をただ焼いただけそれを食み川の冷たさ奥歯で触れる
足元の毛布蹴れども明け方は足の冷たさ一人を知らす
涼風の吹き抜けれども目眩あり惑いなどなく歩いてるのに
夕暮れがあまりに早くこの心流れる雲に涙を添える
いとしくも手には入らぬあの人を紅葉渦巻く心で殺す
望んだって手に入らない望郷なら作り出し一人で住まう
はるかなる空を旅した昴ありこれっぽっちの私にも降る
海の色が冬の色に近づいて渚に誰も居なくなりいく
涼しげな視界広がる秋晴れを音もなく飛ぶ赤いとんぼが
紅く燃えていく六甲の山並何もかもみんな染めてしまえ
月読みに沈む太陽日が暮れる唇に闇甘く愛しく
栗が載る羊羹を食む月のした濃い緑茶現実にあり
密やかな好意に浸る神無月見ぬ物もなく罪に酔ってる
パンフレットに這いずるは松葉蟹黙りこくる用意はできてる
高速で闇夜切り裂く快速の光光と照る明かり淋しき
決別が萩色の疑惑を生み出しても私は生きていくのよ
心の園に木枯らしとともに入る奴を心底罵ってやる
でも本人には遠く聞こえず秋薄のようになびいてやがる
コスモスのようにどこにでも咲いているような人だけど私は愛おしい
つめたい秋の雨が足元を浸すもう歌うしかないくらいに
夜を塗潰すほどに金木犀は強く怪しく強く香る
夕日が沈むころ飲むコーヒーの薫りの底辺に秋が流れ込む
季節はずれの入道雲が乾いた指輪の貴石に流れる
まだ濡れた髪に朝の風がそよぐ秋だねとひとりごち出掛ける
遠くまで走っていくわと励ますなら体育の日は素晴らしい
車の窓に降りた霜に子供たちが落書きするそんな季節
色付いた紅葉が静かに水面に落ちて浮く気持ち良さそうに
狂い咲いたさくらの花びらが冷たいアスファルトに染みていく
鈍いコバルト色が広がる空のした私だけがたった一人
満員電車のなかで半袖だけが浮上するそんな季節
北海道ばかりの物産展が深すぎる秋を舌に伝える
北に帰らない白鳥も風が冷たくなったことは知っている
夏の庭は枯れてしまったけど花梨は瑞々しく碧く実る
指先が冷えるほどの朝毛布のなかであなたがとても恋しい
羊雲がどこか知らない所を目指してコバルトの海を泳ぐ
雲一つない空のしたに渦巻く人々のなかに私がいる
夕日が色諧調を作りながら明日のために沈んでいく
髪を切った頭に幸せの金木犀の薫りが降り積もる
ブランチを摂りながら涼しい風のなかで指折り短歌を作る
新築のタワーマンションが天高く馬肥える空を貫く
この香りのなかで金木犀がサヨウナラと呟く散りながら
唇が乾燥しはじめる懐かしい冬に再開
冷たい水にて今朝の身仕度を整える指先から目覚める
うまい牛肉を食ったので今日や明日死んでも許容範囲だ
茹で栗を割り実をスプーンで削ぐ秋が甘く切なく剥がれる
台風のなか裾を冷たそうに濡らしながらサラリーマンは行く
混みあった電車のなかから目尻で雨風のダンスを伺う
雨で金木犀が散りアスファルトが銀河となる余韻残して
嵐のあとの空気は透明度がミネラルウォーターに似ている
色付きもそこそこに台風に散らされてしまった紅葉の悲劇
色付いた街路樹の下で紙コップのコーヒーは薫りを放つ
野性を忘れた鳩が足元にこぼれたパンプキンを狙う野性
ベルベット生地は落ち葉を見つめながら街の秋を加速していく
夜風と闇夜が体を包み私は秋の一部となっていく
指先が月の白さに適う程冷え始めそして心が空く
あまりにも烈しい大地のリズムは秋に沈む世界を砕いた
苛立つ胃に不特定多数のライノウイルスが住んでいる気配
慣れないハロウィンのため飴玉を買い求め驚く練習
憂欝な雨がずっといつまでも降り続きましたと終わる絵本
枯れた葉を湿らせる街路樹に身を寄せる雀たちも濡れている
忘れられないというクリームリキュールを飲み力を抜いてみる
この秋も忍び足でやってきたライノウイルスを身体に宿す
この発熱があなたに寄せる思いのせいであればよかったのに
さみいさみいという子供たちは可笑しくも笑顔で輝いている
マフラー巻く女性のつぶやく苛立ちでさえ温もりのある朝
頭から離れない歌もこんな寒い朝には冬色に向かう
くびに違和感なく巻き付く襟巻が温もりを提供します
朝日がこれほどに暖かいことを酷く無愛想な駅で知る
喉の痛みがなくなる頃冬はさらに色を濃くしているだろう
混み合う熱気の車内からワッ!と飛び出して冷気を感じる
遠くで聞こえる咳払いが近づき知らない間に咳をする
車窓から見える蛍光灯の青い明かりの冷たさを思う
凍えそうで缶コーヒーを掛け替えない物のように握り締める
もう金木犀の香らない道を極透明な空気と歩く
冬服に塗り替えられた街と人を温かい心で眺める
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