2005/0197

新年の扉を明けて歩みだす笑む門松の脇を通って

雲も風も生まれ変わった昨日と同じでまるで違う元旦

冷え切った体を湯船浸して今年もこの体で生きていく

昨日付けた香りとともに年を越えて今朝はそっと残り香だけ

歌聖に今年も多くの歌が詠めますよう願う一日未明

福袋開封してがっかりしている人を眺める意地悪さ

今年初めての青空の下にて訳もなく泣きたくなりました

錦の包みに守られたお使い物の温もりまで隠せない

英国製の甘い香り初春にふさわしく夢に漂う

真新しいビルの新しい職場といつもの私と地球

未明の氷雨が新品の空気をさらに透明に磨き上げる

家路に向かう人初売りに向かう人会社に向かう人など

慣れない職場の暖かすぎるヒーターが染み込む疲労を喚ぶ

何度目かの今年一番の寒さが謙虚な冬を盛り上げる

願うこと満載の私が今年に沈まないことをまず願う

鳩は呑気そうに飛んでいるけど実は切実なのかもしれない

乾いた吐息にはかない小雨が混じる自分が汚れているような気がする

濡れたコートの裾にいつまでもストーキングする水の玉ひとつ

梅すら咲かない春には遥かに遠い新春に今日も暮らす

何もかも停止する寒い曇天の日に人だけが動いている

グラスが曇り一人だけ霧向こうの曖昧な世界に旅立つ

疲れ滲む体にデジタルの音楽は無条件に染み込む

冷たいままで終わっていくこの日の気丈さを少しでもほしい

こんなに朝早く出掛けるのは久しぶり吐息も白く大きく

私はこれでいいのかと不安を朝焼けするガラスに問い掛ける

これで良いと言わせたい自分の顔は霜降りるガラスに映らず

山茶花が足元を淡く緋に濡らす何がそれほどに悲しくて

石垣の石の冷たさ思い出し荒く熱する気持ちを冷やす

くべられたドラム缶の薪が健気にも真冬に歯向かってみせる

高すぎる青空は未だ日の出の余韻に浸る風は薔薇色

孤独のホイヘンスがエタンの海に着く頃を湯槽に浸かり待つ

たまに素晴らしき日々があるから生きよう手指が荒れてしまっても

あの日が来るたびに今だに心が微震するさようなら出来ない

城址の櫓はやさしい白さ新生の光りで町を護る

空は青色椿は紅僕は鉛色明日は何色か

バーゲンすらすぐに色褪せる鏡開き後の新春の鮮度

風が掻き鳴らす青色銀色の音に耳を澄まし家ごもり

過ちに気付いた頃冷たい風はやさしい風に感じられた

時間は待たないけれど流れてしまえばいい季節と同じように

霞に落ちる山並みの寂しげで幻想的な姿色彩

窓ガラスが曇るほど二人の吐息は接近密接濃厚

傘の先で薄氷を突き割る心地よさ異界へのドアノックするよう

春も遠い寒色の空の下水仙が風に身を任せて

隣のつぼみが開くまで香ることを拒む早咲きの水仙

可憐にたたずむ水仙の真っ直ぐに伸びるさまに気高さを見る

浅い悪夢を見ていたかのように今年二度目の初出社

十年前と同じように薄暗くて寒い朝が訪れる

忘れるなんてできませんよ帰ってこおへんからねの言葉に泣く

長田で車窓を見つめるただ寒いだけでないあの朝を思い

雹が降り注ぐ大地で懸命に生きる人の子の白い息

底冷えから何時もより早く目覚めているのに朝がほの明るい

憂欝の日々であっても木々の芽が膨らむ事が私を支える

忘れ形見で咲いている葉牡丹の引き抜かれる運命の淋しさ

雪を乗せたトラックすら見かけない暖かな冬に暮らしている

駅で車窓を眺めるチョコレートのようなあの人を探して

オレンジに染まる朝日の空タイタンの夜明けもこんな風だろうか

製鉄所の煙が空を歪めて何時もより白く流れ行く

大寒の朝に燃えるように咲く椿で暖をとり胸を満たす

薄い雲がオゾン色を覆いながら遥か彼方へ流れていく

車窓から久しぶりに荒れる海が見える何を求めて荒れる

夜の降雪に期待して目覚める日の裏切りと眩しい朝日

リニアモーターカーが素早くても季節を追い抜くことは出来ない

白鳥が来ず閑散とした水辺が暖かなシベリア報す

昼遅くでかけ際に吐く息の白さ日は長くなっているのに

西に落ちはじめた日が長い影を作り出し早すぎる夕方

長すぎる幸せとそうではない一日がようやく今終わった

色鮮やかだけどまだ歌の歌えない鶯が曇天に灯る

枯れた木に鶯が止まりライムグリーンの実を知らずに実らせる

色に温度があるなら鶯の色は暖かで安らぐ温度

磨いた靴に朝日が写る氷のようにそれは滲み輝く

造花のチューリップにすら心騒めく春恋い焦がれるのです

二桁の気温知らせる電光掲示板の微小な温もり

恋が終わったとしても季節はめぐり移りまた春がやって来る

淡路の裾に打ち付ける白波みたく疑念が消えれば良いのに

夏に買った靴を冬に下ろす怠惰変わらないのは私くらい

チョコレートを溶かす熱もないくらいに思いは冷たく置かれる

春への足音は小さく小さなものであっても聞き漏らすまい

生チョコレートを摘む指先にココアが積もる雪は降らずも

引っ越しの話などが食卓で出る春の息吹の仕業かも

真っ白な息のような空白が心を満たすのを止められない

明日になれば冬も終わると眠り目覚めとともに絶望する朝

粉雪一粒せめて私のためにひとりのために降ってほしい

花屋の店先の菜の花の黄は指先凍える季節の希望

川面から沸き上る湯気が明ける空に張りつく月を歪ませる

肌刺す寒さがあの時の過ち思い出させる痛みと共に

充満する気配が窓を曇らすしらない人達との孤独

外界から閉ざされた車窓の向こうに当たり前の日々がある

ビルの隙間を流れる光の粒窓ガラスの霜融かしていく

雪に閉ざさず憂欝を見えるところに置くけど君は気付かず

陽気になるという予報あり寒くとも仄かに霞む淡路島

不幸せの涙に腫れた目蓋に心地よく蒼い冬が積もる

春みたいな気配の日曜午後気配だけ本当に気配だけ

春先に買っておいたコート我慢すること出来ずに袖を通す

寒い空気のなか海へと向かう背後に明るい山肌背負う

ひとときの春麗かな日は寒波と共に去っていく淋しくも

あと少しあと少しの日々がジェリコの壁のように感じる朝

一月が終わっていく身辺の混沌も安寧も飲み込んで

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